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よしなしごと
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マッチ

亡き祖母がくれた物は、お年玉、着物、謎の品々。
謎の品々というのは、浮き世的に言えば、全く質素で、風のようにさりげない品々なのですが、それより高価なプレゼントに負けず劣らずのもったいぶりで贈与された品々の事です。

例えばある時、「さゆりちゃんにあげようと思って出しておいた」と手渡された小箱(もとはお菓子の箱?)の蓋をあけると、プーンと昔の香りがして、中には色とりどりのマッチがまぜこぜに散らばっていました。色の取り合わせ方、マッチの散らばり具合ともに一見バラバラに見えて、でもそれは実は計算されたバラバラである事は、マッチの色を引き立てるべく、箱の内側に丁寧に単色の色紙を貼り付けた痕跡から推察できました。竹久夢二の千代紙のような世界が、小箱の中にひっそりと詰まっていました。

それを独りで作り、「昔の香り」がするようになるまで、箪笥の中にしまっておくというのは、どんな気持だったのでしょう。イメージを形にしたい衝動と、完成した後、いつか誰かが箱の蓋を開けて、共感してくれる事への多少の期待があったかもしれません。そんな風に想像していると、時代の壁越しにではあっても、人の感性の瑞々しさと根本的な孤独を感じます。

私が大人になってから小箱に感じ入ったからと言って、それは決して祖母が期待するような感じ方ではあり得ないはずではありますが、このプレゼントの謎部分を想像する事が、今の私を多少とも勇気づけてくれる場面も出てきたりして、そういう意味で、謎の品々はかなりの時を経て、その値を上げつつあります。目下上昇中〜!