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よしなしごと
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本棚の前に立つ幸せ


たくさんの本を前にして、何とも言えない嬉しさを感じる時があります。特に読書好きでもない自分が、何が嬉しくて壁一面の本棚に見とれるのか、そんなことをあれこれと考えるのも楽しかったり・・・。


例えば、机の上に鍵が1つ置いてあるとして、それが日常からも、過去の記憶からも何の繋がりもない鍵だったとします。もし、それが一辺5センチの透明アクリルの立方体の中に封じ込められていたら、その鍵の魅力は増すかも知れません。


イメージの世界では、未知の可能性は既知の事実より大きな部屋を用意されます。未知であればあるほど、可能性のサイズは増し、そのような大きな可能性を持つ物体を、小さなアクリル立方体に閉じこめてしまったギャップがイイのです。
さらにこれならポケットの中に入れて歩く事だって出来るし、氷のようにアイスティーの中に沈めて、何食わぬ顔でお茶を楽しむ事だって出来ます。非日常的な可能性と日常とのニアミスの光景を思い描きながら。


本棚もきっと同じ。立ち並ぶ背表紙の壁の向こうに、すぐには出会えないであろう未知が詰まっています。眺めていると、いつもより自分の未来がいつもより膨らんでいる気分になります。そんなにたくさんの未知と未来を「どれにしようかな」と選んでしまうという贅沢な立場に立った時、足の裏からジワジワと幸福感が沸き上がってくるのも当然なのかも知れません。