毒にも薬にも
古本屋で買った漢方薬素材の本は私の最も怪しげな蔵書の一つです。
白くてふわふわして気持ちよさそうな物体から、命がけでも飲みたくない「虫系」
まで色々な姿の原料が写真入りで紹介されています。顆粒の姿で見るよりも
刺激的で効きそうです。
そんな中に鮮やかな紫の花があります。猛毒として知られるトリカブトが鎮痛
、強心作用という効能で載っているのです。毒と薬は表裏一体であることを再
認識させられると同時に、きっとそんな薬なら恐ろしく効くのでは?と想像してし
まいます。この「効きそう」と思わせるものは何なんでしょう。
例えば、白の面積が広くて黒の面積が狭いモノトーンの図柄の場合、黒い
部分を主と見るか、白い部分を主と見るか、あるいは黒と白の境目のラインを
主と見るか見方は様々だと思いますが、白黒のコントラストがあるからこそそこに
何かが見えてきます。音楽も然りなのでしょうか。
それにしても、よく「毒にも薬にもならない」という表現があるけれど、音楽の場
合はあまり良い意味ではないようです。
かといって「トリカブトエキス音楽」や「アルキル化剤音楽」とかいうのが良いかと
いえば、一生のうちでいつかそんな音楽を聴きたいと感じる時もあるとは思うの
ですが、その辺りは常備薬ではないので、長く楽しみたいとは思わないかも知れ
ません。普段は程良く効いて、気がついたら良い気分になってたってくらいの音
楽が良いのかも。
医薬品、医薬部外品、保健機能食品、おばあちゃんの知恵袋など、器用
に使い分ける私達の事ですから、音楽についても無意識のうちに使い分けして
るのかも知れませんが。
そんな事をぼんやり考えつつ、「これは効きそう!」とか「これは嘘っぽい」とか
言いながら漢方素材の写真を眺めるのが好きです。
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