移動時間の楽しみ
笛を担いで色んな場所に出かけるので、たまに移動時間が長くなりそうな
時は本を買います。特に古本の文庫はハズレでも腹が立たない値段なので
あてずっぽに買ってみるのに良いのです。先日古本市で手に取ったイギリスの
寓話の中にこんな話がありました。
些細な誤解で裕福な実家からを追い出された3人姉妹の末っ子が、立
派な衣服を隠すため、道端の草で編んだ編み笠を頭から被り、女中の職を
得ます。仲間うちでのあだ名は「編み笠かぶりちゃん」。
そして夜になると編み笠を脱いだ美しい姿で城の舞踏会に出かけ、みんな
が戻る前に帰ってきてまた編み笠をかぶる。その舞踏会で王子に見初められ
るのですが、誰もその美しい女性が厨房の女中であることに気付きません。
彼女を見つける事が出来ず、ふさぎ込む王子の病床に運ぶお粥の中に、舞
踏会中に王子にも らった指輪をわざと落とし、王子に自分を発見させる
という周到な演出でハッピーエンドです。
この設定、「シンデレラ」と似ていると思いませんか?共通点は、
3人姉妹の末娘
「シンデレラ(灰かぶり)」 と 「編み笠かぶり」というかぶりもの系
タイムリミット付きの変身
小物から持ち主を捜し出すあたり
ただ、シンデレラは魔法使いのミラクルパワーで変身し、最後は宮廷の家来
に発見されるのに対して、編み笠ちゃんは自力で変身し、ラストは自分主導
で身分 を明かす点が違います。
シンデレラの話もカボチャが馬車になってしまったりといった奇想天外な点が
面白いけれど、常に自分のアイディアで道を切り開いていく「編み笠ちゃん」
は 逞しくてキュートなヒロインだと思いました。
唯一気になるのは、「編み笠ちゃん」という翻訳のお陰で肩から上は
虚無僧みたいな格好の女中さんを想像してしまう事です。おかしな想像に
気をとられ、話の本質を見失わないよう気をしっかり持って読めば、たいそう前
向きな気分になれるお話です。
それにしても・・・たった150円の古本で、それなりに充実しちゃった移動時
間だったのでした。
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