名無しの不機嫌たち


 日常の中で、ほんのささやかな、自分でも気付かないほど小さなイライラってないでしょうか。

それはきっととても個人的なもので、私の例を挙げても共感 して頂けるとも思えないのですが、

例えばこんな事です。


事例1:しなり具合の悪い本

 持ちにくく、ページめくりが思うようにいかない本はページをめくるたびに一瞬だけむりやり現実に

引き戻されます。小さいことなので読みながら忘れてい るけれど、100ページの本だと50回。


事例2:家電の動作音

 掃除機など、明らかに大きな音の場合は「うるさい!」と一喝することで自分の中で落とし前

(?)が着くのです。問題はパソコンや暖房などの基本的な動 作音です。高音の「キーン」や

低音の「シャー」を長時間聞いていると、気付かないうちに耳がへとへとに疲れてしまいます。


事例3:反応の悪い笛

 分かりやすく極端な例を作って言えば、「ピー」と吹きたいところを、その前にちっちゃい「ズ」とい

うノイズが入ってしまったとしたら「ズピー・・ズ ピー・・・」。ノイズじゃなくてもちっちゃい「っ」が入って

「ッピー・・ッピー・・・」。これにはきっと5分も耐えられないでしょう。


 こんなミニミニな感情は誰かに話しても「ふーん」で終わってしまうし、自分の中でさえ「不機嫌」と

いう称号すら与えられないかも知れません。でもよく よく考えてみると、喜怒哀楽などという名前を

付けようのないほど微妙な情動の連続が、アニメーションの一コマ一コマのように、積み重なって

日常の中で意外に大きな大切な部分を占めてているような気もします。 

  かといって「名無しの感情に名前を付けよう!」とは思いませんが、表現や共感に

関する仕事をするものとしては考えてみたいテーマの一つです。
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