リアル
知り合いに連れられてRINPA展を見に行きました。展示されている絵画は時代
的にも地理的にも広範囲で見応えがありました。その中に川端龍子という 人の
「草炎」という作品がありました。
黒に近い紺地の上に透け感のある金泥で様々な種類の野の草を描いてあるの
ですが、例えばもし、1つ1つの植物が独自の方程式に従って芽を出したり、枯
れたりしているとしたら、龍子はその方程式の一部を知っていたのかも?という気が
するほどリアルな存在感に圧倒されました。様々な姿の草花の一つ一つが
数式のように思えたと言ったら、絵画に造詣の深い人に変に思われるかも知れま
せんが、あくまで一日本画初心者の率直な感想です。
一般的に「神秘的」と形容されることもあるらしいこの絵の中には、ミステリアスな
モヤモヤや訳ありげな不思議物体などは描き込まれていません。 けれど
茎の弾力、棘のチクチク、風が吹いたらそれぞれの姿ににふさわしく揺れるであろ
う葉の1枚1枚に迫る画家の目を通して、自然の神秘を感じる事が出来ます。
神秘って非現実の中にあるんじゃなくて、真実を見つめようとする時に心の中に
浮かぶハテナなのでしょうか。
金泥の植物たちは、日光がいっさい入るはずのない展示スペースの中で、思いき
り有機的な香りを発散させているように見えました。
歩き疲れた帰り道、「私もいつかそんな香り立つような笛を吹ける人になりたい」
と、ちょい大きめ肉じゃがコロッケパンをかじりながら思ったのでした。