なれるか?万華鏡ン年モノ


 東急ハンズで買った手作り万華鏡キット、正確にいえば全部組み立てて具材の出し入れ

部分だけ固定していないものをいつも手の届くところに置いています。気まぐれに中の具材を取

り替えたり、ガラス片やビーズなどを組み合わせ新しい具材を作って楽しむ事があり、そんな時

はたいがい、時間や首が痛くなる事も忘れて 、シュポン(筒を抜く音)、ザーッ(具材を入れる

音)、ジャラジャラ(具を入れた万華鏡を回しながら覗く音)を繰り返すのです。


 それを半年も続けているうちに、20種類弱の「お気に入り具材組み合わせ」がうまれ、置き

場所に困った結果、仕方がないので一種類ずつ透明容器に入れて窓辺に置きました。

今現在はそれよりもっと気に入った具材を万華鏡の中にセットして、そればかりをジャラジャラい

わせている訳ですから、窓辺の具材はいわばベンチの選手、あるいは具材OBといったものです

。でもそんな具材のOB、OGもその表情を一変させる瞬間があります。


 例えば、作った当日はオレンジと紫の鮮烈な色合いが何ともリズミカルでお気に入りだった具

材が翌日には見たくないほど悪趣味に見えたり、プラスチック製のビーズの色合いがチープな感

じで嫌いだった具材がある日突然、昭和初期のレトロ調に見えて心惹かれたり、エリック・サテ

ィの繊細な旋律のイメージで組み合わせたつもりの具が、時にはどうしようもなく色の悪い炊き

込みご飯のように見えてしまったり・・・。


 美意識は常に新陳代謝を繰り返し、その結果きれいと思えなくなった具材は、生物の連鎖

みたいに直ちにバラして別のを作ればいいようなものですが、鮮度を失った美意識への煩わし

さと執着とを天秤にかけた末、とりあえずは並べておくか、という事になります。


 そんな具材OB、OG達はその時、その瞬間に私が思った「きれい」と一緒に、窓の側でくすん

でみたり、再び輝いたりしながら変化し続け、今も少しずつ増え続けています。あるいはいつか

は年月を経たワインのような味わいに? いやぁ・・・ま、腐っちゃうだろうな。
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