日本の笛の音を探して


 しの笛を聴きに来てくれる人は「日本的な笛の音」を期待している場合が多いので、その期待に応

えたいというのが吹く側の気持ちです。そのためにはまず「日本の笛らしさ」とはどういうものか私なりの納

得できる答えが欲しい・・・しの笛との出会いについては「因縁です」の中に書きましたが、実は出会っ

てからそれを仕事をしようと思うまでにはずいぶん時間がかかりました。その理由の一つはその「らしさ」に

ついて考えあぐねていたためといえます。


 笛の独奏は日本の物語の中に印象的なシーンとしてよく登場します。現実にもきっと様々な形で笛

の演奏はあったと思いますが、残念ながら笛独奏曲の楽譜というものがほとんど今に伝わっていないた

め(尺八ではなく横笛についての話です)その頃の笛の音がどんなメロディーをどんな音色で奏でていた

かは私には推察することしかできません。


 けれど「日本的なもの」が今の私自身の心のどこかにあるとすれば「日本の笛の音」を奏でることも出

来るかも知れないとも思うのです。「日本的なもの」・・・多分それは日本人が「ある」と意識できないほ

ど身近に持っているものなのかも知れません。よく「和風」と呼ばれる昔の日本のテイストはその当時確

かにここにあったはず、でもそれは時間とともに常に流れていくものだから「風」という字をつけて和風と呼

ぶのがふさわしい、「的」という字をつけて「日本的」と呼ぶものは説明が難しい、でも確かにあるような

気がします。


 たとえば先日、三国志の登場人物である劉備、関羽、張飛の3人の中で日本人には劉備が人気

があり、中国人には関羽が人気があるという話を聞き、劉備を好む日本人的感覚とはどんなものだろ

うと思いました。他にも「そば屋で一杯」と「コンビニで缶紅茶を一杯」との間には「日本的」という意味

においてどの程度の違いがあるのだろう?などなど疑問はつきないのですが・・・。


 ところで缶紅茶で一杯する私自身はたいして三国志ファンではないんですが、強いて言えばやはり

劉備が良いかな?と思います。一番好きなのは諸葛亮さんですけれど。
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